2021ポスターのモチーフについて

[お母さんの大切にしていた雛人形]

毎年、沢山の人形達が、我先にと飾られる順番を楽しみに待ちわびていた。しかし、突如、四年前人形達に、その順番は巡ってこなかった。それから二年間は陽の目を浴びることなく真っ暗な木箱の中。
そんな中、二年前ふと、「今年は出してあげなくては…」という衝動に駆られた。今思えば、人形達が私に呼びかけたのではないかと思う。
あらゆる引き出しを開けて、所狭しとしまわれている人形達をあちこちから取り出し、大きな屏風に季節の花、子供と一緒に何本も竹を切りに行き、思いのまま飾り付けた。私の手で飾られたことのない人形達も、喜び半分、不安半分でとまどっただろう。
しかし、明治初期から大切に保管されていたお雛様も、木箱から出し舞台に乗せられライトアップされた時、思いのほか喜んでいたかのように見えた。
そして、昨年義母の実家の蔵にも、甥っ子の天神雛が眠っていると聞き、是非一緒に飾ってあげようと思い【豊徳三棟二重殿】も六十年ぶりに真っ暗な蔵の中から陽の目を見た。
もちろん義母の飾り方とは違うので、「そうじゃないが…」と言われてそうだが、天国からきっと喜んで見ててくれていると思う。 嫁と孫の手で飾られるお雛様を…
      牧野博子「牧野石材店」