2012年、発酵に魅せられた真庭の酒蔵や企業、工房が集まり、同じ「発酵」でも真庭には多ジャンルの発酵があることに気づき、結成。日本酒や味噌、醤油などの歴史ある醸造所から、クラフトビール、ワイン、蒜山ジャージーミルクを使ったチーズ。和洋さまざまな発酵文化を持つ者たちが集まっている。
数々の受賞歴をはじめ、全員がその業界で一目置かれる存在でありながら、なおも発酵に対して妥協を許さない。だからこそ通じ合い、「まにわ発酵’s」を通してさらなる高みを目指している。一世代前ではタブーだった互いの酒蔵や手法を公開し、ほとんど前例のない軟水と硬水の違いを生かした共同醸造も、さらなる高みを目指すため。「まにわ発酵’s」という繋がりが今、真庭の食文化を発信し、国内外から注目を集めている。
1804年(文化元年)美作勝山藩御用達の献上酒として古くから親しまれ、全量岡山県産の酒米「雄町」、そして全国に先駆けて復元した古代製法「菩提酛」で醸す。
県内で唯一の女性杜氏が酒造りを担う。
杜氏辻 麻衣子
蔵元辻 総一郎
1893年(明治26年)北房に創業。伝統ある清酒「大正の鶴」蔵元として知られ、酒米は主に岡山を代表する「朝日米」と「雄町米」にこだわっている。蛍の舞う清き中硬水を汲み上げ、力強くてキレのある酒造りをしている。
杜氏落 昇
1888年(明治21年)久世に創業。初代から変わらない蔵と杉桶を使い、製法も昔ながらの自然発酵にこだわっている。酢、味噌、醤油、どれもすべて手作業でつくられ、ゆっくりとした時間の中で醸されている。
河野 尚基
日本固有の種であり、地元蒜山産の「ヤマブドウ」を中心に芳醇なワインづくりをしている。栽培や醸造が難しいとされていたが、いくつものコンクールで受賞するなど、野趣溢れるヤマブドウの魅力が生かされている。
醸造責任者本守 一生
圃場責任者長尾 竜矢
真庭初のクラフトビール醸造所。旭川の伏流水を使い、副原料に茶葉や酒粕、蜂蜜など個性豊かな地元産にこだわっている。日々研鑽しながらも遊び心を忘れないマイクロブルワリー。
三浦 弘嗣
蒜山の奥に構えるチーズ工房。放牧したジャージー牛の搾りたてミルクを使用。シチリアで学んだ製法をもとに、手間をかけながら濃厚なミルクと移り気な微生物たちの力を借りて風味豊かなチーズを醸している。
竹内 雄一郎
酪農家で、チーズ工房も構える。つねに美味しさを追い求め、ジャージー牛を20年がかりで品種改良。肥料まで手づくりの絶品チーズは、料理人も唸らせる濃厚な味わい。自身の美学に従い、大会には出品していない。
「液体が個体になるんじゃけぇ、面白かろう?」「賞には興味がない。自分がおいしいと思うものをつくる、それだけ」まにわ発酵’s他のメンバーからも一目置かれるチーズ工房には今日も絶えず人が訪れている。
川合 省吾
岡山県の北端にあり、中国山脈のほぼ真ん中に位置する真庭市。蒜山高原から雪どけの美しい軟水がこんこんと溢れ、北房の備中川には鍾乳石から滴る中硬水が流れている。軟水と硬水が交わる珍しい地域として、発酵食をはじめ多様な食文化を育み、うまさけの国とも呼ばれてきた。
食文化を支える真庭の豊かな自然環境は、およそ100万年前に遡る。当時ダイナミックな地殻変動により広大な湖が生まれ、後に悠久の時の中で多くの生き物を育んできた。やがて岩盤から滲み出したその清らかな水は旭川となり、人々に美味という恵みをもたらし、同時に暮らしも守ってきた。
江戸時代には出雲街道の宿場町として栄えたこともあり、酒屋をはじめ、醤油蔵など醸造に関わる発酵文化が華やいだ。それから時を経た今でも、ここにしかない水と発酵文化を求めて多くの人たちが訪れている。